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「点」で終わらせないコミュニティを

「点」で終わらせないコミュニティを

齋藤 健太

齋藤 健太

新潟大学経済科学部3年 / 次世代BASE 代表

2025年3月4日

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#0から1の事業創出#組織を設計する人#学生と社会をつなぐ#地域から仕組みを作る#巻き込み力#AIで課題解決#食から価値を生む#コミュニティ×ビジネス#地方発の経営人材

現在、新潟大学経済科学部に在籍しながら、学生コミュニティ「次世代BASE」を創設し、副代表を務める齋藤さん。彼は、学生が社会に出る前に「仲間・情報・地域」に触れ、活動が社会的な価値として循環する仕組みづくりに奔走しています。一見、行動力にあふれたリーダーに見える彼ですが、その原動力の裏には、受験の失敗、体調不良による療養生活、そして「料理」を通じた再生という、壮絶な原体験がありました。なぜ彼は「食」と「人」にこだわり、組織を持続させることに情熱を注ぐのか。その半生と未来への展望に迫ります。

齋藤(さいとう)新潟大学経済科学部3年生。新潟県新潟市出身。高校卒業後、浪人時代に体調を崩し療養生活を送るが、料理を通じて回復。その後、調理師専門学校を経て新潟大学へ進学する。現在は、週末に料理人として厨房に立ちながら、自身の経験を元に立ち上げた学生団体「次世代BASE」にて、食のプロジェクト「こめくしょん」やAIを活用したシラバス検索システム(CRシステム)の開発など、多岐にわたる価値創造活動を行っている。

体調を崩す中、料理だけはできた

新潟県新潟市、稲作が盛んな田園地帯で生まれ育ちました。一人っ子で兄弟に憧れみたいなものがあって、幼い頃から「仮想ライバル」を作って、何かに取り組むことが多かったです。友達が習字を始めたら負けたくなくて始めたり、泳げないのが悔しくて水泳を習ったり。小・中学校では学級委員を務めました。どうせやるなら、自分もみんなも楽しいことをやりたいと思っていましたね。また、「人がやりたがらない面倒なことにこそ価値がある」ということをうっすら感じていました。

地元で中学、高校と通い、卒業後は浪人しました。理系で、将来はAIなどの分野を学びたいと考えていましたね。ただ、浪人を決めて予備校に通い始めたものの、受験勉強がなかなかうまくいかず、プレッシャーで体調を崩してしまいました。ある日、家の階段から落ちて怪我をしたことをきっかけに、受験勉強もストップせざるを得なくなりました。

自宅で療養する日々を送る中、一人で過ごす時間がとにかく長かったですね。でも、孤独な時間のおかげで、不思議と自分を客観的に見ることができました。確かに進学校からの大学進学という「既定のレール」からは外れてしまった。でも、今の時代、こういう『クセ』のある経験も、むしろ個性になるんじゃないか。そう思えた時「元気になったらあれをやりたい」と未来を妄想する時間が心の支えになりました。

体調には波がありましたが、調子が良い時はキッチンに立って家族に料理を作りました。昔から料理が好きで、母の手料理で育ったこともあり、家族に振る舞うのが楽しみでした。「美味しい」と言ってもらえると、自分が社会の役に立っているような感覚になれましたし、料理をしている間だけは無心になれたんです。

そうして少しずつ回復していく中で、料理への興味が強くなって、将来飲食店をやりたいという思いも芽生えて、近所の農家レストランに話にいって、仕込みや料理などに携わらせてもらえるようになりました。

もう一つ、私を外の世界へ連れ出してくれたのはボクシングでした。いとこがボクシングジムをやっていて、心身ともに弱っていた私を「嘘でもいいから来い」と強引にジムへ誘い出してくれました。最初はしんどかったですが、無心に体を動かし、人と関わる中でエネルギーも湧いてきました。

1年半ほど経ち体調もだいぶ回復してきたので、料理の専門学校に通うことに決めました。

料理だけではない、食で価値創造したい

専門学校に入学してからは、「何かをやりたい」という欲求が爆発しました。学校の授業では調理を学びますが、基本的には一つの料理を作るのは1回。でも、プロになるなら100回作って体に染み込ませないといけません。すべてのジャンルでもっと回数をこなしたいと思い、最大で4つの飲食店を掛け持ちしました。半年ほど無我夢中で働き、最終的にはフランス料理と居酒屋の2つに絞って腕を磨きました。

また、夏休みには「1ヶ月休みがあるなら、ハンバーガー屋をやってみたい」と思い立ちました。とはいえ、店舗を借りる資金もノウハウもありません。そこで、「やり方を知っている人に会おう」と起業家コミュニティの門を叩きました。そこで、佐渡島を横断しながら食を提供する「キャラバンイベント」を計画している人と出会いました。「それなら一緒に出店しようよ!」と、チームで参加することになりました。

仲間と試食を重ねてメニューを開発し、佐渡の各地を回って販売する。自分で考え、体を動かし、お客さんに直接届ける。そのプロセスがとにかく楽しくて、心の底から「解放された」感覚がありました。

イベントの後、次は何をしようかと考える中で、あらためて自分がやりたいことを振り返る時間にもなりました。料理人の先輩たちは、一つの技術を極める「職人」です。本当にかっこいい。でも、自分はそこを目指したいのか?佐渡での経験を振り返ると、私がやりたいのは「料理そのもの」を作ることよりも、食を通じて人が集まる場や仕組み、つまり「価値そのものを創造すること」だと気づいたのです。

それに、私自身が身をもって実感した「食事と睡眠、運動、そして人と会うことで人間らしさは取り戻せる」ということ。この体験をベースに、将来は食を通じた価値創造をすることをしていきたいと思うようになりました。

そのためには、料理の技術だけでなく、社会や経済の仕組みを学ぶ必要があります。大学へ行こうと、あらためて決意しました。ただ、浪人時代の「受験勉強での挫折」がトラウマとして残っていました。一般入試のペーパーテストで勝負するのは怖い。そんな時、「自分の個性をアピールできる「総合型選抜」という入試方法がある、と教えてもらいました。これまでの経験はユニークな武器になる。そう背中を押され、受験を経て新潟大学に進学しました。

「点」で終わらせないコミュニティを

大学に入学してからはITベンチャーでの長期インターンに挑戦したり、写真サークルに入ったり。楽しく過ごしていました。大学2年生の時には、生成AI(ChatGPTなど)との衝撃的な出会いがありました。「これを使えば、頭の中にあるアイデアを形にするスピードが劇的に上がる」そう直感した私は、夢中で使い倒しました。以前から不便だと感じていた大学のシラバス(講義要項)検索のプロトタイプを自作し、それをCRシステムとして実装、学会で発表するまでになりました。

技術的なスキルが身につき、自信もついてきた頃、大学受験の時に書いた「自己推薦書」の内容が頭をよぎりました。そこには「食と人の価値」について触れ、「挑戦が自然と行われる場所を作りたい」と書いてありました。

私が立ち直れたのは、料理という「食」と、外へ連れ出してくれた「人」がいたからです。だからこそ今度は、自分が誰かのための仕組みを作りたい。新しい居場所としての機能を作りたい。「あの時書いたこと、ちゃんとやらないとな」という思いもありました。

当時、私はイベントスペースのあるコミュニティハウスに住んでいたので、場所はありました。ただ、一人では限界がありますし、実現性を高めるには、強力な仲間が必要でした。ある人から、仲間は戦略的に集めた方がいいというアドバイスをもらっていたこともあって、自分と同じような熱量で、人を動かすリーダー経験をしている人に声をかけることにしました。

そこで、学内のサークル長や学生団体の代表を集めた交流会を主催しました。リーダーが抱える悩みや葛藤をシェアできる場所です。そこに集まった中で特に3人のメンバーと意気投合しました。話した瞬間、描いたことを実現できそうだ、と感じたんです。

また、共通の課題意識もありました。学生団体は、すごく熱量があるのに、先輩が卒業すると活動が止まってしまう。ただの『点』で終わるのはもったいない。では、どうすれば続くのか。思い出作りの点で終わらせず、社会に残る「線」や「面」にするにはどうすればいいか。

メンバーと議論を重ねる中で、一つの仮説にたどり着きました。学生が一番集まる巨大なコミュニティを作れば、企業も無視できないはずだ。企業が応援してくれれば、そこに経済的な価値が生まれ、資金が回るエコシステムが作れる。ただの仲良しクラブではなく、社会に価値を生み出す必要がある。活動を持続可能なものにするため、コミュニティを作りながら、一方でその価値を社会と接続することも同時に実践することにしました。

主語を社会に

そうやって立ち上げたのが「次世代BASE」という新潟の大学生コミュニティです。自分が食や人に救われ、挑戦することで変われたように、「挑戦が自然と行われる環境」を目指しています。

「次世代BASE」として最初に仕掛けたプロジェクトは、原点でもある「食」でした。新潟の最強のコンテンツである「米」を活かしたプロジェクト、名付けて「こめくしょん」です。

学生が一番お金を使うのは食や観光です。そこを入り口に、単におにぎりを販売するだけでなく、大学の授業と連携して活動が単位として認められる仕組みも構築しました。「楽しい」だけで終わらせず、大学生活のメリットにもつなげる。この戦略が功を奏し、「次世代BASE」は、約1年半で県内外30大学・約300人が参加するコミュニティへと成長しました。食領域に留まらず、メディア・イベントなど全9つのプロジェクトを立ち上げ、年間50件以上のイベント企画・運営、SNS総フォロワー6,000人超を実現。学生主体の取り組みとしては、新潟県内最大規模に拡大しています。

ただ「次世代BASE」は、あくまで学生のためのコミュニティであり、活動の主語は「学生」です。これだと、どうしても内輪の盛り上がりで終わってしまいがちで、社会的なインパクトに欠ける。活動を持続させ、本当の意味で社会と接続させるには、主語を「学生」から「社会」に変えなければなりません。「学生がやりたいからやる」ではなく、「社会が必要としているからやる」そうやって社会的な価値を持たせなければ、お金も人も循環しない。

そこで次世代BASEを運営しながら、社会との接続口となる法人「株式会社ネオシーム」を立ち上げました。「次世代BASE」が学生の熱量やアイデアを生み出す土壌だとしたら、「ネオシーム」はその熱量を社会的な価値に変換し、企業や地域と取引をするための装置です。

例えば、企業が若者の意見を聞きたい時、単なる学生団体では契約や責任の面で二の足を踏みますが、法人であれば対等にビジネスができます。「学生だから」という甘えを捨て、経済的な価値を生み出すエコシステムを作る。そうすることで、先輩が卒業しても資金とノウハウが残り、後輩たちが挑戦し続けられる「循環」が生まれると考えています。

ただ、自分自身は、起業一本でやっていくつもりはありません。まずは一度、就職したいと考えています。

今の私に見えているのは、あくまで「学生目線での組織論」です。圧倒的に社会で勝っている企業、強い組織の中に身を置き、「なぜその組織は強いのか」「トップはどういう意思決定をしているのか」を、内側から肌感覚で吸収したいのです。守破離ではありませんが、型を知らずに型破りはできません。社会の「型」を徹底的に学んだ上で、将来的には再び新潟に戻り、今度こそ自分の会社を大きく育てていきたいと考えています。

Profile

齋藤 健太

Kenta Saito

齋藤 健太

新潟大学経済科学部3年 / 次世代BASE 代表

新潟県新潟市出身。高校卒業後、浪人時代に体調を崩し療養生活を送るが、料理を通じて回復。その後、調理師専門学校を経て新潟大学へ進学する。現在は、自身の経験を元に立ち上げた学生団体「次世代BASE」にて、食のプロジェクトやAIを活用したシラバス検索システムの開発など、多岐にわたる価値創造活動を行っている。

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